叔母

私には叔母が2人いる。

それぞれ母方の姉と父方の妹になるが、どちらもほんとうに格好良い人だ。



父方の妹の方は、父と歳が10も離れているため、父よりも母のほうが歳が近かった。私が幼いころはいつも、どこかに遊びに連れていってくれた。煙草を吸い、会うとよく「負けたから」と言ってパチンコの景品であるお菓子をくれた。それを家に持ち帰ると母は少し嫌そうな顔をしていた。おばは短大を卒業してからは都会に出て、得意の喋りを生かして宝石をじゃんじゃん売って、どかどか稼いでいたらしい。おばは常々「寅さんになりたい。」と言っていたが、その都度、家族全員「なってるよ」と思ったし、実際寅さんだった。10年ほど前に実家に帰ってきて今は普通に働いているが、おばの部屋にはまだ古い型のルイヴィトンやシャネルの鞄がある。


私の母は安定を優先する堅実な人なので、豪快で、結婚もせずに煙草を吸いパチンコに通い、犬を愛でるようなおばのことがあまり好きではなかったと思う。おばが遊びに連れて行ってくれるとき、幼いながらも母の表情でそのことは分かった。けれど、どうしてもおばの燻らす煙草のけむりの非日常感が格好良く見えたのだ。煙草を止めてしまった今でも、私はあの時感じたことが忘れられない。



世間には良妻賢母が求められる。それはそうだ。良い妻であり、賢い母だなんて最高のひとだ。でも、ちょっと派手で他人の目を気にせずちょっといけない秘密を一緒に作ってくれるひとに惹かれてしまうのは仕方ないのだ。そして少し憧れてしまう。けれど、それは仕方ないことで抗いようもないのだ。